心はいつも雨模様

記憶より記録

妄想手紙 ~ 幼馴染へ送る 1通目 (私) ~

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 森見登美彦さんの『恋文の技術』や夏目漱石の『漱石書簡集』そして姫野カオルコさんの『終業式』の書簡体小説が大好きすぎるので、自分も真似て、たまに手紙形式で記事を書いていきたいと思う。

 タイトルは妄想手紙と書いているけど、実際に起きたことやその場面の空気など、もしかすると手紙に反映させているかもしれない。しかし過去は幻想に過ぎないし、大して充実した人生を送っていない私なので、妄想が膨らみ過ぎ、あり得ないことを書いてしまうかもしれないが、まあ、楽しく記事を書いていけたらそれでいいと思っている。

 尚、この手紙形式の記事を数少ない友人に見られると非常に恥ずかしいので、私と、そして、このくだらない記事を見に来てくださった心優しい寛容な読者様だけの秘密である。

 

 ~ 数少ない友人の一人、ヤマジュンへ送る ~

 ヤマジュン

拝啓 久しぶり。もうすぐ春がやってくるけど、毎年の事だからこれといって感慨深い思い入れはない。ただそこらへんの物好きな花見愛好家がキャーキャー騒いでいるだけだと俺は認識してるよ。
 君とは高校までずっと一緒だったけど、大学になって別々の道に歩むことになって、さらに社会人になってからもっと疎遠になったような気がするけど、変わらず元気にしてるか?愛に満ち溢れた俺という存在を目にすることがなくなって、君はさぞかし悲しんでいるだろうと思ったから、手紙を書いて送ることにしたよ。ありがたく受け取ってほしい。
 さて、社会人になってもうすぐ1年経つわけだが、君は今どういった感じだい?社会人になる前、急に俺に「内定を辞退したい」という悲観的なメールを送ってきたね。覚えてる?あれからまだ約1年しか経っていないわけだけど、ずいぶんと懐かしく感じるなあ。いつも俺の前で虚勢を張っていた君も、あの時ばかりは先の見えない社会という漠然とした大海原を目の前にして、それを君はこれでもかと恐れていて、うわんうわんと泣きついてきたね。この弱虫め、と心の中で思ったが、それと同時に君にもそんなナイーブな面が隠されていたんだなあ、と、少しほっとした自分も少なからずあったんだぜ。君という人間は心の芯が異様に図太くて、いつも周りから慕われていたから、友人と言う立場から見ても一目置いていたよ。でも、その芯の図太さゆえに周りからは変態呼ばわりされていたことも今となっては懐かしい。これも今だから、手紙だから言えることだ。
 今までお互いなかなか連絡をとって来られなかったから、これからは手紙を通じてやりとりしていけたらなと思う。男同士でキモチワルイかもしれないが、そんな気持ち悪さも良い思い出に変わって行くと俺は微かながら信じているよ。微かながら。
 それではこの辺で。手紙くれ。まあ別に送ってこなくてもいいから、君の今の簡単な近況なんかをメールでもいいから教えてほしい。社会人で傷ついた心を一緒に分かち合おうではないか。
 どうか体だけはお大事にな。

                                            敬具

2017年3月25日

                                                                                                     マルイネコ