心はいつも雨模様

記憶より記録

異動

普段はまったく話すことのない同じ課の上司(課長)に、いきなり「今晩、一緒に夕食でもどう?」と言われた。

この時、何となく嫌な予感はした。

課長に連れられ、近くの居酒屋に入り、緊張しながらも夕食を楽しんだ。

最初は今の仕事のやりがいとか、課の雰囲気とか、嫌いな人は誰なのか、などなど他愛のないことを話していたのだけれど、「それじゃあ、本題に入ろうか」と、急に話題を変えてきたので、一瞬にして緊迫した空気が張り詰めた。

「新しい仕事やってみたくない?」
「新しい仕事ですか」
「そう。例えば今の仕事を離れるとしたら、君に何ができると思う?」
「それは…やはりシステムを1年以上学んできたから、システム関係をベースにして仕事をするのがいいんじゃないでしょうか」
「システム以外で答えて」
あまりの詰問に、私はしどろもどろ状態だった。
「情報は会社にとって武器なので、情報を扱う仕事をするのが、会社にとっても、私にとっても、成長できる仕事になると思います」
漠然とした答えだったけど、課長は「なるほどね」と答えてくれた。

こうして悪夢のような夕食は終わりを迎えた。
気が付けば、居酒屋に入ってから4時間が経っていた。

数日後、また課長に呼び出され、来月から営業課へ異動になると命じられた。

それが、8月の大きな出来事。

入社して1年4ヶ月、死に物狂いでプログラミングを学んできたのに、あっけなくその努力が水泡に帰すことになる。今後、プログラミングを扱うことはないとも言っていた。

技術を磨くために遠い地へと就職したのに、私は何をやっているのだろう。

思い通りにいかない人生に、唾を吐きかけてやりたい。