心はいつも雨模様

記憶より記録

雨のちゴキ

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驚愕するほどの出来事を味わったのは今回で二度目。

ついに奴が現れた。神がかり的な俊敏性と、ダイヤのごとくキラキラと黒光りするボディを兼ね備えたゴキ様。

私は、一人暮らしを始めるときに、ある目標を立てた。それはゴキ様が私の前に現れないように、部屋の健全性を最低限は保つようにする、ということだ。一週間に一度は必ず掃除機をかけ、水周りに汚れが目立てば、すかさず市販の掃除道具を使って対処をする。これは学生時代から行ってきたことで、現在まで続けてきた。

別に潔癖性というわけではない。ある程度の小汚い部屋もそれはそれで味があると思っているし、汚れと共存していかないと、逆に体が弱ってしまうのも最近の医学でこれみよがしと謳われている(たぶん)

それなのに、今回は最悪だった。
こんなにも注意していたのに…こんなにも、警戒していたのに…

雨の日。ジメっとした嫌な暑さが、部屋を纏わりつく中、私は夜に目が覚め、そこでふと、明日の朝ご飯のお米を、炊飯器にタイマーでセットし忘れていたことに気が付いた。

寝ぼけ眼で台所へと向かう。
台所のシンク下にお米が収納されているので、腰を屈め、下の扉を開ける。
計量カップを握り、いつも通りにお米をすくう。
しかし、お米をすくったつもりだったけど、計量カップの中がカサコソカサコソと騒がしい。

よく見ると、ゴキ様だった。

「ギャー!」と、声を上げたいところだったけど、真夜中だったので、声を押し殺し、小さく呻き声を上げた。
そして、目の前が真っ白になった。
ああ、いつからだろう、いつからこのゴキ様は、このお米に集っていたのだろう。

…私はもしかすると、ゴキ様が這い回ったお米をずっとおいしそうに…いや、やめよう。理性が壊れる。

私はそのまま計量カップをお米の中に戻し、お米ごとゴミ箱に捨てた。
そして、10分間、いや、それ以上の時間、立ち尽くした。
胃の中をすべて消毒したい。そのような思いに駆られた。

しかし、ゴキ様に驚愕されられたのは、何も今回に限った話ではなく、私がまだ子供だった頃にも、顔が青ざめてしまうくらいの出来事をゴキ様はやってのけた。

確かその日も、ウトウトとしていた。ふと、歯を磨くのを忘れていたことに気づき、私は目をこすりながら洗面所へと向かった。

誰もいないのに、カリカリ、カリカリ、と音がする。
何だろう、と、電気をつけると…
ゴキ様が、歯ブラシのブラシ部分を、ガジガジとかじっていた(実話です)
私はこの時になって初めて、ゴキ様にも歯があるんだ、ということと、人類の最大の敵はゴキ様であることを知った。

ゴキ様の話はもうこれでおしまい。書いてて気分が悪くなる。

私は、これまで20年以上生きてきて、確かなことを一つだけ実感していることがある。それは、心の乱れは部屋の乱れに影響する、ということだ。

先週、先々週と、私はシステム開発に行き詰まりを感じ、そして先輩社員からの厳しいお言葉もあり、かなり凹んでいた。もうどうでもいいや、という投げやりの気持ちが日常生活にも及んでしまい、大切な部屋の掃除も大分適当になっていった。たぶん、今回、人生で一番部屋が荒れていたと思う。

でも考えて見ると、心の乱れは部屋の乱れ、言い換えれば、これすなわち、部屋の乱れは心の乱れ、になるのではなかろうか。

部屋をきれいにすると、心も清らかになって、多少は充実した人生を送ることができる。そうやって今まで過ごしてきたのに、いつの間にか、忘れてしまっていた。

人生って、難しい。分かっていても、忘れてしまうのだから。

ゴキ様はたぶん、周りの目からは気づけない、心の乱れを教えてくれる、貴重な虫だったりするのかもしれない。

しかし、そうやっていい方にゴキ様のことを持ち上げても、やはりどうしても抵抗を感じてしまうのは、それ以上の負の何かがあるんだろうな、きっと。

…しばらく外食にしよう…