心はいつも雨模様

記憶より記録

妄想手紙 ~ 幼馴染へ送る 5通目 (私) ~

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  ヤマジュンさま

拝復 5月は春なのか夏なのかよく分からないけど、外をちょっと出歩いただけで汗が滲むので、俺的には夏に該当する。もうすっかり初夏だよ初夏。しょかしょかしょか。ガラスのように透き通った冷たいサイダーが恋しくなるなぁ、友よ。

 辟易とする。それが君の手紙を読んでの第一の感想だ。その妄想のような恋物語は読んでいてイラっとする。虫酸が走る。ゴミ箱に捨てようと思ったけど、こんな手紙が世に放たれると、君は死んでしまいたくなるくらい恥ずかしがると思ったので、やめといた。感謝したまえ。でも、よくよく考えてみると、自分も同じような状況なので、どうか俺の手紙を捨てないでほしい。君が先に天に召したら、棺の中に入っている君の枕元に、お花と一緒にそっと手紙も添えてやるから、安心してね♥

 まあ、何はともあれ、現実の恋人を手に入れたこと、まずは祝います。この、バ○ヤロー!せいぜい恋の辛さを味わいながら、彼女とともに充実した日々を過ごすがいいさ。一人では見つけられないものを、二人でならきっと見つけられると思うから、彼女とのかけがえのない時間を大切にしろよ。しかし、君は偶然を装って彼女のもとに近寄ろうとしたのではないか。ストーカーと違うかそれ?知性を欠くと、君はただの変態だから、それだけは肝に銘じておくように。

 仕事のこと、本当にやりたいことをやれないで悩んでいるようだが、まあ、あまり悩みすぎるのは良くない。俺も同じような状況だけど、できるだけ深く悩まないようにはしてる。

 俺は25年間生きてきて、人生で為になることを学んだ記憶はこれっぽっちもない。ビジネス書や自己啓発本をそれなりに読んだりもしたけど、結局その人の考える生き方だから、心に響くものもあったけど、本当の意味では参考にはならなかった。だから、一瞬を生きてる俺たち人間は、人生のことを考える必要なんて、もしかすると、ないのかもしれない。それに、俺は社会人になってまだ1年だから、長年社会で生きてきた社会人のように、為になるアドバイスはできない。

 でも、そんな無知な自分が、一つだけ、確かなことを言えるとしたら、君は「苦労の中にやりがいがある」ということを分かっていることだ。よくいるだろう。苦労をしようともせず「自分のやりたいことをしたい」といって、自由奔放に生きていこうとする奴。そういう人は、たいてい辛いことから逃げたいだけなんだよ。だから、たとえ望んだ職に就けたとしても、辛いことに直面したら、結局また逃げ出してしまうと俺は思う。確かに従順な働き蟻みたいな人生に、面白味なんてない。好きなこととか、自由な生き方には、憧れる。

 でも、実際に自由を手にしたからといって、本当にそれが望んだものになるかというと、そうとは限らないだろう?つまり、俺が言いたいのは、どんなことでも、辛さの中に、本当のやりがいがあるのだということ。俺が敬愛している作家N氏も、作家になるために、全てを投げうって執筆活動に励んだ。そして実際に作家になったN氏は、本関係の業界を生で見て、本当に小さな世界だったと、驚いたらしい。だから俺が思うに、どこに行ったって、結局はどこも小さな世界なのではないか、ということ。広い世界に羽ばたくには、辛いことも全て受け入れて、地道に好きなことに励んでいくことなのではないか。N氏は、たとえ小さな世界でも、幅広い想像力を使って、自分の視野を目一杯に広げて、作家という仕事に励み、やりがいを持たれているのが分かる。

 まあ、長くなってしまったけど、言いたいことは、幸せなことばかり考えない君は、ちゃんとしているな、ということだ。やりたいことに挑戦して、失敗したら、また職に就けば良いじゃないか。たぶん、君なら何とかなるよ。

 俺の方も、このまま3年間、今の仕事に意味を見いだせなかったら、辞めようと思う。俺も、挑戦してみたいことは、ある。でも仕事を辞めて、それに挑戦しても、実るかどうかは分からない。そんな時は、アルバイトでもしながら、這いつくばってでも頑張っていこうと思う。たぶん俺もお前も、まだまだ成長期なんだよ。

 5月の後半に、皆で旅行するとのこと、おそらく自分もスケジュール的には大丈夫だと思う。喜んで参加する。京都だと、いろんな観光地もあるので、きっと楽しいはずだ。京都まで、電車で一時間くらいの場所に住んでいるのに、未だに足を運べないでいるから、俺も楽しみだ。

 春子に手紙を送ったと言ったけど、俺は、墓穴を掘ってしまったのかもしれない。春子からの手紙は、読むたびに、ヘコヘコしてしまう。この前、郵便受けに春子の手紙が届いていると分かったとき「ごめんなさいごめんなさい」と言いながら、ダッシュで自分のアパートの部屋に駆けこんでしまった(笑)誰もいやしないのに(笑)しかしまあ、それなりに楽しめてはいるので、何とか続けていきたいと思う。春子が旅行に参加すること、とてもとても楽しみです(泣)

 それじゃあ、この辺で。次の手紙は旅行の後になるだろう。小説の中の登場人物に出会えたように、久しい俺の姿を見て、感動の涙を流すでないぞ。

                            敬具

2017年5月13日

              マルイネコ

追伸 君の小学時代の行為は、なかったことにはなりません。君に一生付きまとう、負の遺産だと思います。しかしながら、そんな思い出が俺たちの宝物となっているから、それをなかったことにしてしまうと、我々の思い出は紙屑以下となります。どうかどうか、自分の犯した過ちに、責任を持ってください。以上。

 

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