心はいつも雨模様

記憶より記録

異動

普段はまったく話すことのない同じ課の上司(課長)に、いきなり「今晩、一緒に夕食でもどう?」と言われた。

この時、何となく嫌な予感はした。

課長に連れられ、近くの居酒屋に入り、緊張しながらも夕食を楽しんだ。

最初は今の仕事のやりがいとか、課の雰囲気とか、嫌いな人は誰なのか、などなど他愛のないことを話していたのだけれど、「それじゃあ、本題に入ろうか」と、急に話題を変えてきたので、一瞬にして緊迫した空気が張り詰めた。

「新しい仕事やってみたくない?」
「新しい仕事ですか」
「そう。例えば今の仕事を離れるとしたら、君に何ができると思う?」
「それは…やはりシステムを1年以上学んできたから、システム関係をベースにして仕事をするのがいいんじゃないでしょうか」
「システム以外で答えて」
あまりの詰問に、私はしどろもどろ状態だった。
「情報は会社にとって武器なので、情報を扱う仕事をするのが、会社にとっても、私にとっても、成長できる仕事になると思います」
漠然とした答えだったけど、課長は「なるほどね」と答えてくれた。

こうして悪夢のような夕食は終わりを迎えた。
気が付けば、居酒屋に入ってから4時間が経っていた。

数日後、また課長に呼び出され、来月から営業課へ異動になると命じられた。

それが、8月の大きな出来事。

入社して1年4ヶ月、死に物狂いでプログラミングを学んできたのに、あっけなくその努力が水泡に帰すことになる。今後、プログラミングを扱うことはないとも言っていた。

技術を磨くために遠い地へと就職したのに、私は何をやっているのだろう。

思い通りにいかない人生に、唾を吐きかけてやりたい。

驟雨日記 "ため息交じりの金曜日"

この世で最も尊い曜日は金曜日。そう答える人の割合は3人に2人くらい、いや10人中9人は口を揃えて金曜日の尊さを訴えるのではなかろうか。

ただ、6月の最後の金曜日は湿っぽかった。プールサイドにいるかのような梅雨らしいジメッとした空気が社内を充満している中、上司のため息もそれと等しく充満していた。

今日、長年(20年以上)会社を支えてきた鬼上司が私のいる部署にお別れのあいさつを言いに来た。本当に突然のことだったので驚いた。

転職なんてありふれた出来事だけど、私のいる会社は中小企業なので、一人辞めるとかなりのダメージを受ける。特に今回辞められる鬼上司は、会社の半分以上の売上を担っている、重要な部署を取りまとめている人だったので、会社の存続を考えると、辞めるなんてあり得ないと思った。でも、今日限りで辞めると、確かに言った。

社会人なってから、別れの連続ばかりだ。入社して1年と数ヶ月が経ち、その間に上司を含め10人の先輩社員が社内から姿を消した。残ったのはお通夜の如く静まり返る社内と、仕事の引き継ぎに追われる上司のため息ばかり。

私も、めまぐるしい日々に、何となくため息を吐く。

ため息交じりの金曜日に、乾杯。

驟雨日記 ~ 梅田と難波を使い分け ~

大阪で何か買い物をするなら、まず真っ先に思い浮かぶ場所が梅田か難波だ。この大阪の二大地域は休日のみならず平日も多くの人で賑わいを見せている。どちらも地下鉄の御堂筋線で簡単に行くことが出来るから、地元の人や旅行者でごった返す。

お店がたくさんあるので買い物には困ることはないのだけど、2つの地域には大きは違いがある。難波はどちらかというと中高生向けの安い雑貨や飲食店が多くある。心斎橋まで続く長いトンネルのような商店街は四次元ポケット並に何でもあるので「何か買い物をしたいな」と思ったなら難波に行くのが最善だ。

一方で梅田は少々値の張る商品が綺麗なガラス張りのお店に並べられている。財布、手帳、万年筆、ペンケース、名刺入れ、時計、バッグ、アクセサリーなど、一目見た瞬間に「高価だな」と分かるものがガラスケースの中に陳列されている。

この2つの地域を私は使い分ける。難波だと暇な時にフラフラと出歩いて、多くの商品を見物しながら運命的な出会いに期待する。梅田だと目的を持って足を運ぶ。意中の人に逢いに行くかのような熱心さの籠った足取りで目的のお店を目指す。

たまに意中の商品が高価過ぎてフラれることもある。
今日はちょっぴり高価なノートを買いに出掛けた。
無事に出会うことが出来たのでラッキーだった。